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杉山 ユキさん インタビュー

2018年8月より展開しているステーショナリー『SIKI』。
『SIKI』は紙の専門商社 株式会社竹尾と株式会社博報堂のデザイナー杉山ユキさんらによって生み出された、日本の四季をテーマにしたノートです。
どのような背景で生み出されたかなど、お話を伺いました。

●企画の意図を教えていただけますでしょうか。
--はじめのきっかけは、竹尾(※)さんからお年賀のデザインを依頼されたことです。竹尾さんには数えきれないほどたくさんの種類の紙があり、それぞれに名前もあります。学生時代に初めて竹尾さんの紙見本帳を見たとき、紙の種類がこんなにあることに驚き、感動しました。そしてそれをデザイナー以外の方にも伝えられるお年賀が作れればいいなと、思いました。
※竹尾は1899年の創業の紙の専門商社で、色や風合い、豊かな素材感をもつ高級特殊印刷用紙「ファインペーパー」の開発・提供をしている企業です。先端技術を取り入れると同時に、多くのトップデザイナーとともにクリエイティビティを刺激する素材としての紙を発信しています。

そこで、つくったのが、1枚ずつ違う種類の紙を使ったメモパッドです。そのお年賀がとても好評だったので、商品化してみようということになりました。
まず、紙見本帳を解体して、色や名前ごとに分類してみました。すると、あまり聞きなれない日本の色名が多く、同じ名前ごとに束ねていくうちに、春の新緑のグリーンや梅雨の空のブルーなど日本らしい季節の色にまとまっていきました。 こうして今のSIKI ができました。
紙を「色彩SIKI-SAI」ゆたかな「四季SIKI」のように味わってほしい、そんな思いがこめられています。

●色を選んだ理由と、選定の経緯。それぞれのストーリーなど教えてください。
--すべての紙見本帳を解体して、その紙名や色名の意味も調べながらグループ化していくと、自然と季節が見えてきました。グループ分けした紙の1枚1枚の質感と色から季節の移ろいを感じられるように、紙の順番を決めていきました。紙の名前を見てるだけでも、物語風にイメージしていただけるのではと思います。

--『春のわかば』 新緑の淡い緑から春の緑へ。その中にあるパールの部分は、残雪の間からのぞかせた若芽のよう。なんとなくこのページを見たときに、日本の風景が見えてくればいいなと思いました。

--『春の花々』 花の名前の色が自然と集まりました。お花見というと一般的には桜ですが、桜の木の下に咲く黄色の菜の花や、すみれが入っているのもポイントです。どこもかしこもお花でいっぱい、そんな景色を想像させる1冊です。

--『初夏の梅雨』 曇り空から雨が降り、虹がかかってすこしずつ晴れてきて、紫陽花が咲いた。「つゆ」や「あじさい」という色名の紙があったりと、季節を感じるものを集めました。とくに梅雨は日本らしい絶妙な色合いだなと思います。水色だけでなく紫陽花の紫が入ったり、紙の色と質感から季節が見えてくれればいいなと思います。

--『夏の海辺』 青の間に入る白は入道雲のようでもあるし、波の泡のようでもある。浅く透明な海がだんだん深い濃い色になり、最後は砂浜に戻るというイメージです。

--『夏の陽ざし』 はじめは「向日葵」という名前で考えていて、向日葵っぽい色の紙ばかりを集めていました。しかし他のものと比べてこれだけ「向日葵」なのも違和感があると思い、途中から「陽ざし」に変えました。ギラギラする太陽のような金色の紙などを入れて、暑い日本の陽ざしをイメージさせるものにしています。緑色は「春の若葉」と違って濃いものを選び、茶色は土でもあれば向日葵の種のようでもある。セミの鳴き声が聞こえてきそうです。

--『秋の実り』 紙を見ていると、おいしそうな色名のものがたくさんありました。栗、くるみ、びわ、あんず、ブドウなど、春など他の季節とは全然違います。秋らしい、実りを感じます。

--『冬の雪』 全て白で、雪やスノー、アイスなどの名前の紙を集めました。個人的に雪山が好きでよく行くのですが、降ったばかりの雪、ぼた雪、溶けかかった雪の質感がそれぞれ違うように、紙にも違った質感があります。 日記などで使ってくれた方が、そろそろ雪が降ってきたな、氷みたいだな、と移ろいを感じながら使っていただければと思っています。全て白なので並び順的になるべく違った質感が前後にくるよう、気をつけました。

これらのストーリーは、それぞれ漠然としたものです。使ってくださる方がページをめくるたびに、紙から想像力を膨らませていただければといいなと思っています。

●一番気に入っている色とその理由を教えてください。
--雪です。パッと見は地味ですけど紙の質感の違いが楽しいのと、同じ白でもいろいろなものがあるんだという驚きがあるからです。色鉛筆で絵を描いた時の違いも楽しいです。

●斜めに断裁した理由など製品の特長を教えてください。
中の紙がより綺麗で魅力的に見えるように、斜めに断裁しました。十二単のようなイメージです。そして、それぞれの紙色が際立つように、表紙は白に統一しました。
ロゴについては最初銀箔押しにして目立たせる案もありましたが、使う方の事を考えてそこはあまり主張せずなるべくシンプルにしました。
ターゲット層は、特に規定はしていません。子どももお年寄りも外国の方にも、『SIKI』を通じて紙の魅力や日本らしさを感じていただけると嬉しいです。

●苦労した点を教えてください。
--竹尾さんには約7000種類もの紙があり、そのすべての紙見本帳を解体して名前の意味も調べながらグループ化していった作業は、とても大変でしたが、発見が多く楽しかったです。それよりも、制作する竹尾さんの方がもっと大変かなと思います(笑)。
全て違う紙が、本のように1ページずつ順番が決まっているのです。多くの種類を丁合いしないといけないのは、ものすごく手が掛かります。しかし、普通なら大変だからと言ってやらないで終わるところを、竹尾のみなさまは、とても前向きに「是非やってみましょう。」といってくださり、実現できたことがとても嬉しかったです。

●最後にデザインをする上で、大切にしていることを教えてください。
--子どもの時に広告のポスターを見て、「面白いな」と思った感情が今でも忘れられません。子どもからお年寄り、また外国の方など、いろいろな人の心に残るものが作れればいいなと思っています。

>おわり

杉山ユキ


武蔵野美術大学視覚伝達デザイン学科卒業。株式会社博報堂、アートディレクター。
広告、パッケージデザイン、商品デザインなどを手がける傍ら、ミラノサローネ(2016)、21_21 DESIGN SIGHT「チョコレート」展など、展覧会にも多数参加。
D&AD、NYADC、ADFEST、SPIKES、パッケージデザイン大賞、グッドデザイン賞などで受賞。

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