世界初のプラスチック一体成型のチェア
ヴァーナー パントンによってデザインされた「パントン チェア」は、ヴァーナー パントンとヴィトラが1960年代から開発を始め、1968年に量産がスタートした、プラスチックによる世界初の一体成形型のキャンチレバーチェアです。パントンチェアは国際的なデザイン賞を多数受賞し、世界中の著名な美術館のコレクションとして所蔵されるなど、20世紀デザインの象徴ともいえる一脚です。
1960~1990年代
ヴァーナー パントンが一体成型で作られたプラスチック製チェアのデザインを考案してから、メーカーを見つけるまでに数年かかりました。
「ある日、私のもとを訪れたヴィトラ創業者の息子、ロルフ・フェルバウムが、パントンチェアの試作品を指さして、「どうしてこの椅子は製品化されていないんだ?」と尋ねました。そこで私は、「15から20社の製造元が製造に挑戦しましたが、さまざまな理由から諦めたのです。」と答えました。著名なアメリカ人デザイナーの言葉に、「座れない椅子は、椅子ではない」とありますが、この試作品は椅子としてまだまだ不安定な状態でした。すると、ロルフ・フェルバウムはすぐさまヴィトラのエンジニアであるマンフレッド・ディーボールドに電話をかけたのでした。これが後に20世紀のデザインアイコンとなる、パントンチェアが出来上がるまでの長い道のりのスタートとなりました。ロルフ・フェルバウムの存在無くして、パントンチェアは生まれなかったのです。」
- Verner Panton -
ヴァーナー パントンがキャンチレバーのプラスチックの椅子を開発したのは1950年代後半ですが、当時そのデザインの椅子を製品化できる製造元はありませんでした。ヴァーナー パントンのアイデアにもともと興味を持っていたヴィトラの創業者であるウィリー フェルバウムは、息子のロルフ フェルバウムとヴィトラの製造開発責任者であるマンフレッド ディーボールドからの報告を受け、この椅子の製品化を決意しました。
エンジニアとヴァーナー パントンは、数年にわたる試行錯誤の末、職人の手作業によりガラス強化繊維にポリエステルを塗り込んで作られたプロトタイプ10脚を完成させました。
1967年、冷圧したガラス繊維強化プラスチックを用いて150脚の試作品が作られ、世界で初めてのプラスチックによる一体成型キャンチレバーの椅子が誕生しました。鮮やかな色と彫刻的なデザインは大きな衝撃を与えましたが、製造コストと工程の複雑さから大量生産には至りませんでした。
その後、Bayer社(※1)の硬質ポリウレタン素材を採用し、1968年に「パントンチェア クラシック」の量産が開始されました。
※1:ドイツのノルトライン=ヴェストファーレン州レバークーゼンに本部を置く化学工業及び製薬会社。
さらに高品質な製造方法を模索する中で、BASF社(※2)の新素材による射出成形(※3)を試みましたが、技術的課題や素材の経年劣化により1979年に一時製造を中止。信頼回復と改良を経て、1990年に強度の高いポリウレタン素材で製造を再開しました。
※2:ドイツ・ルートヴィヒスハーフェンに本社を置く世界最大の総合化学メーカー。
※3:加熱して溶かしたプラスチックを金型に送り込み、冷やすことで成形する技法。
1990年代~
1990年代に入ると、プラスチックと射出成形の技術革新が一層の進化を遂げます。このことは、ヴィトラとヴァーナー パントンにとって、パントンチェア製品化への大きな足がかりとなり、ポリプロピレン製による現在のパントンチェアの量産化に成功しました。最初の発表から30年の時を経て、ヴァーナー パントンが掲げた大きな目標の1つであった、プラスチック製の椅子を手ごろな価格で量産化することが、ついに達成されたのでした。それは、彼が亡くなった直後、1999年のことでした。
現在、ヴィトラは、表面の光沢が美しい強化プラスチック製のパントン クラシックと、落ち着いたマットな質感が特徴のポリプロピレン製のパントン チェア、多くの美術館のコレクションとして見ることができる2種類に加え、2007年にはヴァーナー パントンが当初より思い描いていた子供用の椅子、 パントン ジュニア を展開しています。パントンチェアは、名作椅子としてだけでなく、現代に至るまで大人から子供まで広く愛され続けています。
2026年 パントンが夢見た「鏡面仕上げ」
ヴァーナー・パントンは、デザインにおける「反射」の可能性を追求したデザイナーでした。家具や照明だけでなく、インテリア空間に至るまで、鏡面仕上げが生み出す光や反射の効果に強く惹かれ、さまざまな表現を試みました。
その探求のひとつが、1970年代初頭に構想された「パントン チェア」の鏡面仕上げです。一体成型による美しい曲線を描くパントン チェアは、光を受けることで表情を変える鏡面仕上げに適しているとパントンは考えていました。しかし当時の技術では、椅子として使用する際に生じるわずかなたわみに耐えながら、傷のつきにくい鏡面仕上げを実現することは困難でした。
それから半世紀以上。技術の進歩と高度な製造プロセスによって、パントンが思い描いた構想がついに現実のものとなりました。
鏡面の輝きを、ゴールドで
「パントン チェア クラシック ゴールド」は、パントンが追い求めた鏡面仕上げのアイデアを、温かみのあるゴールドトーンで表現した限定モデルです。
その輝きは、複数のワニス層に金属粒子を埋め込むメタリゼーション加工によって生み出されます。純度99.9%のシルバーによる高い反射性のコーティングを施し、その上に複数の層を重ねることで、深みのあるゴールドの鏡面仕上げを実現しています。
一脚に込められた、80時間
完成までには26もの精巧な工程を必要とし、製造時間は約80時間。そのうち約50時間は、職人による細心の手作業です。表面を滑らかに整え、下地をつくり、反射性の高いシルバー層を施し、ゴールドのコーティングを重ねる。最後には色ムラや傷、埃、継ぎ目やエッジまで入念に検査します。
パントンが半世紀以上前に描いたアイデア。それを現代の技術と職人の手仕事によって形にした「パントン チェア クラシック ゴールド」。ヴァーナー・パントン生誕100周年を記念して、世界限定999脚のみが製造されます。
時代を超えて受け継がれたデザインと、パントンの尽きることのない探求心。その軌跡を一脚に凝縮した、特別なパントン チェアです。
ご購入前にご確認ください
本製品は、ベース本体に純銀を焼き付けた後、黄味がかったコーティング剤を何層も塗り重ねることで、金色の鏡面仕上げを実現しています。
この製造工程上、コーティングの層の間に気泡や、擦れ・くすみのように見えるものが生じる場合があります。
これらは製造工程上、完全に避けることが難しいものであり、ヴィトラではサステナビリティへの取り組みの観点から、こうした状態の個体をすべて廃棄するのではなく、一定の許容範囲を設けて品質判断を行っています。
本国の品質基準・判断をもとに、日本国内でも全品検品を行ったうえで出荷しています。状態が著しいものについては、本国へ返品・交換を依頼しています。
そのため、製品には個体差があり、気泡や擦れ、くすみのように見える箇所が見られる場合がございます。
お届けする製品は、国内での検品を経て出荷されたものであり、上記の状態については「製造工程上避けることが難しく、ヴィトラの品質基準において良品と判断されたもの」であることを、あらかじめご理解・ご了承いただけますようお願いいたします。
お手入れ・メンテナンス方法
日常のお手入れは、研磨剤を含まない柔らかい布(マイクロファイバークロスなど)で優しく乾拭きしてください。汚れが気になる場合は、水または薄めた中性洗剤を含ませた柔らかい布で拭き取った後、乾いた布で水分を綺麗に拭き取ってください。
※研磨剤入りの洗剤やスポンジ、メラミンスポンジなどは表面の美しい輝きや塗装を傷つける恐れがありますので使用しないでください。