どんな人にも、どんな場所にもしっくりなじむ、シンプルで優雅なフォルム
チャールズ&レイ・イームズが、1948年ニューヨーク近代美術館が開催したローコスト家具デザイン国際コンペのためにデザインした「イームズシェルチェア」は、1950年にハーマンミラー社より製品化され、大量生産が可能になった初めてのプラスチック製の椅子となりました。
製品化当初は、FRP(ガラス繊維強化プラスチック)素材で製造されていましたが、再資源化できないという理由から、2001年に環境に配慮したリサイクル可能なポリプロピレン製に切り替えました。カラーは素材に練り込んであるため、長年にわたって使用しても色褪せることがありません。時代を超えてなお新鮮で質の高いデザインは、今もなお座り心地の良い椅子として世界中で親しまれています。
1939年、クランブルックアカデミーでチャールズとエーロ・サーリネンが行なった成型合板の初期研究に始まり、その後カリフォルニア州ベニスのイームズスタジオでレイと一緒に続けた研究の成果として生まれた成型チェアは、「最高のものを、最大多数の人に、最も安い価格で」提供したいという二人の願いを表す代表作となりました。新しいフォルム、仕上げ、そして組合せを試すたびに、イームズ夫妻は、シェルチェアはこうあるべきだという境界を押し広げました。一体型のプライウッドと型打ち金属で試した後、ファイバーグラスに注目し、曲がるワイヤーで実験しました。ファイバーグラス製品が環境に悪影響を与えることが明らかとなったときは、より安全なプラスチックに切り替える決定が下されました。
DSR
チャールズ&レイイームズの名をデザイン史に残した名作シェルチェア、DSR (Dining Side-chair Rod)。プラスティックを一体成型した座面とエッフェルと呼ばれるスチール脚部を組み合わせた完成度の高いデザイン。時代を超えて残ってきたフォルムは、ダイニングシーンをはじめ、様々な空間で今なお多くの人から親しまれています。
「エッフェル」ベースは、スチールロッド構造とスペーサーに関する数々の研究から生まれました。安定性と耐久性をさらに高め、長期のハードな使用に耐えうるベースを目指して、ハーマンミラーは長年にわたり改良に取り組んでいます。
チャールズ&レイ・イームズとハーマンミラー
チャールズ・イームズは、ワシントン大学で2年間建築の勉強をした後、1930年にセントルイスで建築業務を始めました。
6年後に、イームズはミシガンのクランブルック芸術アカデミーで教鞭をとります。その後、クランブルックで知り合ったレイ・カイザーと結婚し、カリフォルニアに転居してから、チャールズとレイは、成形合板をかたどる実際的な方法の研究を始めました。
1942年、この実験を繰り返しながら、アメリカ海軍からの依頼で、添え木、担架、グライダーシェルなど、プライウッドを使って開発し、第二次世界大戦後には、低価格ながら高品質で大量生産可能な椅子を作り出しました。
この形成技術は余分な連結部品を省くことができ、製品自体の重さを軽減できるようになりました。そして、この技術は現代家具デザインの基礎となりました。
その後、ハーマンミラー社とのコラボレーションにより、多くの名作家具を発表する他、ショールームのデザイン、カタログ・広告等のグラフィックデザインも手がけました。