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1960年にヴァーナーパントンによって考案されたパントンチェアは、vitraと共同で量産用に開発されました。多くの国際的なデザイン賞を受賞しており、多くの美術館のコレクションに保存されています。【1959年/1960年デザイン】
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ヴァーナー パントンによってデザインされた「パントン チェア」は、ヴァーナー パントンとヴィトラが1960年代から開発を始め、1968年に量産がスタートした、プラスチックによる世界初の一体成形型のキャンチレバーチェアです。パントンチェアは国際的なデザイン賞を多数受賞し、世界中の著名な美術館のコレクションとして所蔵されるなど、20世紀デザインの象徴ともいえる一脚です。
ヴァーナー パントンが一体成型で作られたプラスチック製チェアのデザインを考案してから、メーカーを見つけるまでに数年かかりました。
「ある日、私のもとを訪れたヴィトラ創業者の息子、ロルフ・フェルバウムが、パントンチェアの試作品を指さして、「どうしてこの椅子は製品化されていないんだ?」と尋ねました。そこで私は、「15から20社の製造元が製造に挑戦しましたが、さまざまな理由から諦めたのです。」と答えました。著名なアメリカ人デザイナーの言葉に、「座れない椅子は、椅子ではない」とありますが、この試作品は椅子としてまだまだ不安定な状態でした。すると、ロルフ・フェルバウムはすぐさまヴィトラのエンジニアであるマンフレッド・ディーボールドに電話をかけたのでした。これが後に20世紀のデザインアイコンとなる、パントンチェアが出来上がるまでの長い道のりのスタートとなりました。ロルフ・フェルバウムの存在無くして、パントンチェアは生まれなかったのです。」
-Verner Panton-
ヴァーナー パントンがキャンチレバーのプラスチックの椅子を開発したのは1950年代後半ですが、当時そのデザインの椅子を製品化できる製造元はありませんでした。ヴァーナー パントンのアイデアにもともと興味を持っていたヴィトラの創業者であるウィリー フェルバウムは、息子のロルフ フェルバウムとヴィトラの製造開発責任者であるマンフレッド ディーボールドからの報告を受け、この椅子の製品化を決意しました。
そして1963年にヴィトラとヴァーナー パントンは、やがて20世紀のデザイン史に残ることになるこの椅子の開発に取り掛かりました。しかし、彼が思い描いていたような曲線で構成された繋ぎ目のない一体成型の椅子をプラスチックで製造することは、当時の技術においては不可能とも言える挑戦的な取り組みでした。ヴィトラの製造担当者とヴァーナー パントンは、数年にわたり休むことなく、度重なる試作品の製造、強度の試験やデザインの変更などの試行錯誤の日々を重ね、その結果、職人の手作業によりガラス強化繊維にポリエステルを塗り込んで作られたプロトタイプ10脚がついに出来上がりました。
1967年、冷圧したガラス繊維強化プラスチックを用いて、150脚の試作品が作られました。これが世界で初めてのプラスチックによる一体成型キャンチレバーの椅子となりました。ヴァーナー パントンのデザインを象徴する鮮やかな色と、彫刻を思わせる斬新なデザインは、当時のデザイン界に、大きな衝撃をもたらすことになりましたが、製造費の高騰と、複雑な工程のため大量生産には至りませんでした。その後、Bayer社(※1)の硬質なポリウレタン素材と鋳型を使って成型する製造方法に挑み、1968年に、現在の「パントンチェア クラシック」の量産が始まりましたが、依然として多くの手作業による仕上げが必要でした。
※1:ドイツのノルトライン=ヴェストファーレン州レバークーゼンに本部を置く化学工業及び製薬会社。
ヴィトラとヴァーナー パントンはこの製造方法に満足することはありませんでした。よりよい方法を模索し続けていた彼らは、BASF社(※2)が開発した新しい熱可塑性のプラスチック素材が、射出成型(※3)の仕上げに要する工程を大幅な削減につながることを発見しました。しかし当時の技術では、最も重要であった背もたれと座面を一体に繋ぐカーブ部分の厚みの調整をすることができず、幾多の設計変更を余儀なくされることとなりました。その後、この素材は、経年劣化や耐候性の低さなどの問題が判明し、1979年には一旦製造を中止せざるを得ませんでした。強度の面でパントンチェアがもたらしたヴィトラの品質への信頼回復には、数年を要することとなりましたが、パントンチェア完成への情熱は冷めることなく、複雑な工程の課題を残しつつも、強度の高いポリウレタン素材に一旦戻り、1990年に製造を再開しました。
※2:ドイツ南西部のルートヴィヒスハーフェン・アム・ラインに本社を置き、150年の歴史を持つ世界最大の総合化学メーカー。
※3:射出成形(しゃしゅつせいけい)は金型を用いた成形法の一つです。合成樹脂(プラスチック)などの材料を加熱して溶かし、金型に送り込んだ後、冷やすことで目的とする成形を行います。注射器で液体を送り込む様子に似ていることから、「射出成形」と呼ばれるようになっています。
1990年代に入ると、プラスチックと射出成形の技術革新が一層の進化を遂げます。このことは、ヴィトラとヴァーナー パントンにとって、パントンチェア製品化への大きな足がかりとなり、ポリプロピレン製による現在のパントンチェアの量産化に成功しました。最初の発表から30年の時を経て、ヴァーナー パントンが掲げた大きな目標の1つであった、プラスチック製の椅子を手ごろな価格で量産化することが、ついに達成されたのでした。それは、彼が亡くなった直後、1999年のことでした。
現在、ヴィトラは、表面の光沢が美しい強化プラスチック製のパントン クラシックと、落ち着いたマットな質感が特徴のポリプロピレン製のパントン チェア、多くの美術館のコレクションとして見ることができる2種類に加え、2007年にはヴァーナー パントンが当初より思い描いていた子供用の椅子、パントン ジュニアを展開しています。パントンチェアは、名作椅子としてだけでなく、現代に至るまで大人から子供まで広く愛され続けています。
Verner Panton (ヴァーナー パントン)
1926~1998年。
デンマークのゲントフテで生まれたヴァーナー
パントン(Verner Panton)は、Odense Technical Collegeで学び、その後、コペンハーゲンのthe Royal Danish Academy of Fine Artsにて建築を学びました。卒業後1950年から1952年の間は、アルネ・ヤコブセンの事務所で働き、1955年に自身の建築とデザインのスタジオを設立しました。以降、パントンは多数の独創的な家具や照明を世に送り出しています。
色彩と幾何学模様に魅せられたパントンの情熱は、テキスタイルデザインにも及びました。床、壁、天井、家具、照明、テキスタイル、プラスチックやエナメルで作られたウォールパネルなど、空間を構成するすべての要素を一体化させ、それ自体をアートに昇華することで、パントンのインテリアデザインは伝説とも言われました。中でも有名な例は、1968年と1970年のケルン国際家具見本市で開催されたヴィジョナ展、ハンブルクのシュピーゲル出版本社、オーフスのヴァルナレストランです。
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