「自然そのまま」のフォレストシリーズ
ワイルドバーチは、市場のニーズに基づいた従来の概念を見直そうというニュースタンダードな試みです。外見的な均一性や完璧さではなく、自然のそのままの不完全さを「美しさ」として讃え、新たな価値観を提案します。
その第一弾として、2023年に「スツール 60」の誕生90周年を記念し、フィンランド語で「野生」や「自然な状態」を意味する「スツール 60 ワイルドバーチ」が登場しました。その後、2025年にはアルテックの定番アイテムであるダイニングテーブルやチェア、ベンチにも展開が広がり、「フォレストシリーズ」として新たにラインナップに加わりました。
サステイナビリティに対する価値の提案
これまでのアルテック製品は木材選定の過程において、自然素材ならではの特徴が色濃く現れた木材を表面に使うことを制限してきました。自然ならではの痕跡が表面に現れた「L-レッグ」は上から塗装をした製品のみに使用され、隠されてきました。こうした木材選定は主に、製品の外見的な美しさを統一することを目的に行われていますが、選定で省かれる木の多くは、品質や構造上において何も問題がありませんでした。
新たな木材選定基準の導入とその目的
アルテックは、2020年よりフォルマファンタズマと協働の末、「Wild Birch=自然そのままの白樺」という新たな木材選定基準を考案しました。従来の木材選定基準の幅を少し広げ、自然ならではの個性や特徴が表出したバーチ材を新たな木材選定基準として導入した背景には、「サステイナビリティに対する新たな価値を提案する」、「アルテック製品の基準の幅を広げ、これまで以上に自然素材を無駄なく大切に使用する」、「工業化と気候変動により変化するフィンランドの森林の現状を伝える」の3つの目的があります。
自然そのままの品質と不完全な美しさを価値と認め、これまで以上に自然素材を無駄なく大切に使用することを提唱しています。
幹の芯の濃い色の部分
木が樹齢を重ねると幹の芯は徐々に他の部位に比べて色が濃くなります。芯の近くにある濃い色の木材、成長過程や伐採、乾燥時の気象条件によって色味が異なる木材が使用されます。
枝の節
「節」は、木の枝がかつて合った場所に現れる模様です。木が成長するにつれて、下の方の枝は自然と枯れたり折れたりし、その根本が新たな木の層に巻き込まれ覆われることで節となって現れます。
昆虫による跡
世界的な気候変動の影響でフィンランドの森で育つ木材も、木に穴を掘る昆虫の影響を受けやすくなってきています。昆虫があけた穴は、木の成長に伴って新たな組織に覆われ、暗く色づいた痕跡を残します。
フォルマファンタズマ / Formafantasma との協働
ワイルドバーチシリーズは、フォルマファンタズマとアルテックの協働によって開発されました。フォルマファンタズマは、イタリアを拠点とするアンドレア・トレマルキとシモーネ・ファレジンによるデザインデュオです。現代デザインに影響を及ぼす、環境的、政治的、社会的な力についての調査や研究を行っています。