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暮らしの中で、インテリアファブリックは心地よい空間を演出するために選ばれてきました。それはまさに、その人の暮らしや、自分らしさを表すひとつの要素とも言えます。日常の暮らしを癒してきたインテリアファブリックを「Tシャツ」という形に落とし込んだ「Tシャツの可能性」プロジェクト。「kijinokanosei」のファブリックを使い、大人なTシャツができました。

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2022年よりスタートした「kijinokanosei」は、新しい生地を作る過程での可能性、そこから広がるものづくりの可能性を追求していくファブリックブランド。生地にまつわる長年の仕事を通じて培った知識と経験、新しいものへ挑戦する熱意と冒険心で奥行きのある表情を持つ個性豊かな生地を生み出しています。
今回は「kijinokanosei」のお二人に、ブランドやファブリックについてや着こなしのことなど、インタビューをしました!是非お楽しみください。

「kijinokanosei」
吉川さんと田中さんについて

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株式会社 スタンプス
左:田中喜子さん / 右:代表取締役:吉川修一さん


山崎(センプレバイヤー):お二人の経歴を聞かせてください。

吉川:僕は新卒でアパレル業界に入って、最初のアパレルメーカーで7年、コンサル会社で小売りを5年ほど務め、その頃に仲良くなった仕入先の会社に2000年頃に移りました。業態開発や店舗開発の責任者として、代官山界隈で11店舗ほど、JRの商業施設など複数の出店に携わりました。企画よりもブランディング的なポジションをずっとやっていくうちに、商品を作っている生地などの中身に興味が湧いてきた。たまたまイギリスで見つけて日本に持ってきたのが、インテリアファブリックのブランドだったんです。
インテリア系のブランドをファッションにどう置き換えられるかをポイントに仕事をする中で、プリンティングルームへ見学に行ったり、ものづくりの現場に立ち会う機会も出てきました。そんな中で、海外の方が日本の生地をたくさん使っていることが分かったんです。
僕はその頃年に3-4回行っては現地で生地を見つけていたのですが、その逆があることにびっくりして、そこから日本の生地というものに興味が湧いて、自分で素材からものづくりをしてみたくなりました。そして2013年に独立しました。

山崎:外側から内側に入ってったって感じですね。

吉川:川上から川下に興味が向かってったっていうことですね。

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山崎:今でも海外で日本の生地は使われているものなのでしょうか?

吉川:かなり。特に今でも有名なメーカーは多く使っていると思います。でもあまり知られていないですよね。イタリアの生地などはきちんとブランド名が入っていますが、日本の場合はなぜか伏せられているというのは、やっぱり日本人特有の、黒子に徹する感覚というか。日本的な美学かもしれませんが、僕にはそれがちょっともったいない気がしていました。
2013年にオリジナルブランドのスタンプアンドダイアリーを立ち上げたのですが、最初から日本の中で歴史もあっていい生地とされているものを選んで使おうと思っていました。それは将来的に自分がいろんなきっかけを作ってくれたヨーロッパに売りに行きたいなと思っていたからで、素材に対するこだわりは人一倍ありました。

山崎:名前をあまり出さないという面は、北欧の家具デザイナーにも通づる面があるような気がしています。

吉川:職人気質っていうんですかね。イタリア人とかだと、自分が作ったんだ!っていう主張がすごい(笑)。

山崎:名前入れときたい。みたいな。(笑)

吉川:でもそのほうが世界には認知されやすい。そこは生地だったり、ブランディングというところをもっとアピールしたらいいということなんじゃないかと思っているんです。

山崎:海外に向けてもそうですし、日本の人たちにもアピールできてない寂しさはありますよね。こういうものづくりをしているんだよという。

吉川:海外の人のほうがストレートな反応があって。日本では、海外で売れていると日本で売れるみたいな流れもまだまだ国民性としてあるというか。

山崎:認められたものがいい、みたいな国民性。

吉川:いいと思ってたんだけど、あと押しがあるとよりいい。

山崎:昔は洋服を買うときもそんなに素材を詳しく接客されることも少なかったように思いますが、最近はどうでしょう?

吉川:今はだんだん物の価値も上がって、伝えないともったいないなという感じになっていると思います。

山崎:家具も同じだと思います。環境に優しい素材を使っているか、例えばFSC認証の木材を使っているかなど。逆にそうでないとダメという流れになってきていますよね。


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田中:私は、学校を出てから5年間は名古屋のアパレルでパターンとデザインをずっとやってました。その時にいろんな生地屋さんが生地を持ってきてくれたんですけど、それを見ているうちに自分でも生地を作りたくなっちゃったんですね。それで愛知県一宮市が繊維産地だってことに気が付いて、そちらに転職したんです。当時の服地はまだ今みたいに生地のバリエーションが多様化してなくて、とある柄があったら隣の店でも同じ柄が出てる。みんなバッティングのことばかり気にしてました。それを見ていたら、どんなに形やデザインが素敵でも、生地をオリジナルでつくらないと意味がないのではと思うようになりました。
産地に就職してからは、毎週のように色々な機械屋さんに行って職人さんと話すようになって、5年間現場を見てきました。それもひとつのきっかけで次のアパレルブランドに転職することになるわけですね。そこでは主に織りの素材を担当していて、メインデザイナーの思いを具現化していく仕事をセクションリーダーとしてやっていました。そこで刺繍やプリントも同時にやりだして、とことんいいものをひたすら追求していました。

山崎:素晴らしい経験が続きましたね。最初の5年間があってこそ、そこに繋がったんですかね。

田中:そうですね。ただそんな20年間のうちに、だんだん産地が弱っていってしまったんです。20年前、もうすでに産地は弱くなっていたのですが、そこからもどんどん廃業されていって今残っているところはそんなに儲からないのに無理してやってくれているところも多かったり。
ここから先は何があたらしいビジネスのやり方なのかっていうのをみんな模索している。職人さんたちにちゃんとお給料を払うためには、何がいいのかということを皆が考える時に来たのかなという感じです。

山崎:漠然と減っているという情報は知っているのですが、職人さんがいなくなってしまうとか、賃金が安いとか。商品を売るメーカーも、私たちのような販売店も、物を売るということと同時に、地域を建て直したり、根から盛り上げていくことをしないといけないのではとひしひしと感じています。

田中:地域ブランディングみたいなところですよね。やはりそこで作られたものが世界中で売れるくらいのブランディングをしないとですね。

山崎:世界的に認められていていい仕事ということが、後継ぎ問題の解消にも繋がる気がします。


「kijinokanosei」はどのようにして生まれたのか?

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山崎:「kijinokanosei」を始めるきっかけについて教えてください。

吉川:2022AWからスタートしました。きっかけは田中との出会いです。僕は日本の生地を海外に持っていきたい気持ちをずっと持っていました。前職でイギリスのブランドや、南仏のテキスタイルブランドの生地で洋服を作っていたのですが、その逆をやりたくなってきた。仕入れるだけでなく日本の技術を売りに行きたい。自分のブランドを立ち上げて7~8年経ってたタイミングで田中と知り合って、コレクションしていた生地のスワッチをワーッと見せてくれたんですね。それをブランドとして表現して、世界でも展開してみたいという気持ちが生まれました。
長く売れているものやブランドになっているものって家具のブランドが多いように思います。洋服だとシーズンで変わらないと難しいところはありますが、インテリアだと永続的に続けられるなっていうのはヒントでした。海外にも持っていきやすいのではないかとも思いました。長い目で見た時に洋服用の生地もありだと思うのですけど、インテリア用の生地の方が可能性があるのではないかと思ったんです。

山崎:インテリアの生地も使われるものが決まってきてしまっているところはあると思います。

吉川:インテリアの方々に聞いても全く同じことを仰います。アパレルとインテリアの共通点は、ファブリックです。僕はそこに可能性を感じました。50年代とか60年代の雑誌を見ているとインテリアと洋服のファブリックを合わせたりしていることが多くて、すごく新鮮なんです。生地が主役で、そこから洋服にいったり、インテリアにいったり、服飾雑貨になったり。ファブリックって平面なので、アイデア次第で可能性が広がります。
あとはコミュニケーションツールにもなると思ったんです。立ち上げる前、ブランド名には困っていてみんなで色々アイデアを出しあったんですけど。とある方に何をやりたいの?って聞かれたときに、「生地の可能性を追求したいんです」、と伝えたらじゃあそのまま付けようってことになりました。

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インテリアとアパレルで同じ生地を使用したkijinokanoseiのビジュアルイメージ(Instagram:@kijinokanosei)


山崎:とある展示会でスタンプスさんのブースを見つけた時にインポートブランドの横に「kijinokanosei」を見つけて。どんなブランドなんだろうと気になっていたので出会えたことが嬉しかったです。暫くして田村(センプレ代表)が設計事務所ima(以下、イマ)さんの繋がりでスタンプスさんの展示会に行って、繋がっていったという感じでしたね。そこから駒沢のセンプレのオフィスにも来ていただいた流れでした。
それから、イマさんデザインのファブリックで、センプレオリジナルの商品を作らせていただきました。センプレとしても冒険な感じだったと思います。ソファの生地もほとんど無地メインで、柄を取り入れるのはどうなのかなとも不安だったんですが、作ってみたらお客様にも好評で、元々はソファ用のオプションクッションですが、単品でも買っていただけたりしました。

吉川:展示会でのスタイリストの黒田さんのプレゼンテーションも良かったですよね。

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※2023年6月のセンプレオリジナル新作発表会での黒田美津子さんのスタイリング(Instagram:@mitsulab)


「Tシャツの可能性」について

山崎:「kijinokanosei」から着想を経たこの企画名なんですが…まずこの名前を使わせていただいて大丈夫なのでしょうか?

吉川:良いと思います。

山崎:「Tシャツの可能性」は、今後シリーズとしてやっていきたい企画です。インテリアのファブリックを身に着けて楽しむ。自分のライフスタイルを身に着けて外出することで自分らしさを表現する。第一弾は「kijinokanosei」のファブリックでつくる、大人が着たいTシャツです。我々アパレルはあまりやってきたことがないので、今回のTシャツを作成するのも…ほんとに清水の舞台から飛び降りる気持ちで。(笑)

吉川:最近はインテリアショップやメーカーがアパレルを取り扱う機会も増えてきました。空気の流れが変わってきたというか。

山崎:そうですね、安易に始めるというよりは生活の中で共通する部分を知ってもらいたいという感じです。最終的には生地を作っているところを知ってもらえるきっかけになればと思っています。
スタンプアンドダイアリーでもTシャツをずっと作られていると思うんですが、トレンドというか流れみたいなものってあるのでしょうか?

吉川:スタンプアンドダイアリーでは白いシャツを立ち上げ当初から作り続けています。評価をいただけたのはとても嬉しかったですね。スタンプアンドダイアリーは、上質な日常着をテーマにしているので、もう少し買いやすくならないかと社内で相談した時に、刺繍素材を部分的に使いましょうとなったんです。それが定番になりました。前身頃だけが刺繍の、さりげない感じが好まれたんですね。その後もっとカジュアルにできないかという相談をしたら、前身頃だけ布帛の生地をつかって、あとはカットソーにしましょうとなった。

山崎:なんか、分かりますすごく。買いたい気持ち。

吉川:カジュアルでも綺麗めでも。Tシャツとブラウスの中間、のような。


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※スタンプアンドダイアリーのTシャツ(Instagram:@stampsinc)


山崎:40代に入ると本当に何を着ていいかわからなくなるんです。

吉川:あれは本当に不思議というか、素材と表情のバランスが年ごとに変わるくらいの感覚ですよね。

山崎:私はある日突然花柄が似合わなくなって。(笑) その日は突然やってくるみたいな。

吉川:(笑)。自分の目が変わるっていうのもありますよ。時代って変わるので、ちょっと前の自分と違うっていうか。
あとは温暖化で、夏が長くなって4月から11月まで半袖を着てる。ということはやはりTシャツの需要は増えると思います。僕も来年60歳になるんですけど、自分が思ってる自分じゃなくなってくる。年々の変化もあるし、Tシャツくらいは毎年変えたいな、とも思いますよね。Tシャツを着る期間が長くなる分、冒険するタイミングがあってもいいんじゃないかと。Tシャツの概念がちょっと変わっていく気がします。着てて気持ちいいとか、人に見せるとか、TシャツでもTPOが広がるんじゃないかなと思います。

山崎:TPOができるTシャツっていいですよね。先日試作品をお借りしたタイミングで神原(センプレ社長)が会長の80歳のお祝いの会の時に着て行ったんです。ジャケットの下に。そしたらいろんな人に褒められたみたいです。

吉川:たくさんの方に見ていただけたんですね!

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※調整前のサンプルTシャツ


吉川:ジャケットの下に着るっていいですよね。最近着るものがみんな決まってきてる傾向もありますよね。白い無地Tシャツの上にさらっとした上下のセットアップとか。

山崎:確かにそうですね。

吉川:昔だったらジャケットにはネクタイとかチーフみたいな感じでしたけど、ほぼそれが消えようとしているので、Tシャツで遊べたり、自己主張できたりするとすごくいいですよね。

山崎:今回メンズも作って、シルエットをどうするか、かなり迷いました。神原(40代)からも、同年代の人は40代に入って何を着たらいいかわからないと言ってる人も多いと聞いていましたし、1枚で素敵に着こなせるものはどういう感じがいいのか?と。何回もパターンを直してもらったり。

吉川:すごく合わせやすいTシャツに仕上がったかなと思います。シンプルなTシャツって正直主張はできないし、ファストファッションを着ていてもあんまりわからないですよね。こういう織りが入っているTシャツって、シャツに近いので着てて間違いないというか。


着こなしについて

山崎:吉川さんが、ファッション業界の人とインテリア業界の人の、服装のセンスが違うと仰っていたのですが、どういう点でそう思われますか?

吉川:そうですね…ニュアンスでしょうか。インテリア業界の方をみると、アパレルの方との買い方がちょっと違う気がします。おしゃれの基準って人それぞれですが、インテリアの方の全体的なコーディネートが好きなんです。あんまり主張はしていないんですけど、素材のいいものを着てらっしゃる方が多い。華美なファッションではないけど、自分をちゃんと表現している方が多く見受けられます。どこのブランドのを着てるって感じではなくて、その方に合っているものを見極められている。
アパレルの方は…否定的に捉えて欲しくはないんですけど(笑)、それを着なきゃいけないみたいな空気がちょっとあって、トレンドを意識したり…それはそれで職業だし、自分を表現するっていうのにはすごく適していると思うんですけど。僕は長く使えるというのを基準に考えるので、来年もこれを着ることができて、それに足していくっていう感覚です。

山崎:それはすごくわかります。インテリアにも共通する部分がありますね。買い足していくという部分。洋服は毎年同じものなんか着れないよと仰るかたもいますが、そう言う風にはしたくないな、と思っていて。次の年にクローゼットから出しても違和感なく、「あ、また今年もこれが着れるんだ」と本当に思えるTシャツを作りたいな、と思いました。

吉川:アパレルで30年になりますが、昔のアパレルってもっとサイクルが早かったんです。とにかく展示会も多かったし、市場が元気だったけど、年4回くらい展示会をやって、疲れ果てているデザイナーさんも見てきて、これが楽しいのかなって思うようになって。そんな時にメゾン・エ・オブジェ(パリで行われるインテリア&デザインのトレードショー)に行ったら、とあるブースで「今年の新作です」って2つ3つだけ紹介されていたりとか。なんていいタームなんだ!と思いました。インテリアファブリックも、1シーズンで終わらずにアーカイブ化していく。そういう基準で考え方を変えると、景色が見えてきたというか。インテリアの人とファッションの人の時間軸が違う、っていうことで、服装も変わってくるんだと思います。

山崎:すごくしっくりきました。時間軸が違うというところが。

吉川:我々もファッションとインテリアのお取引先が半々くらいなんですが、だんだんファッションのほうもインテリアに近くなってきたかなという感じです。生地屋さんが提案してどんどん服を作るっていうことが今下降気味なんです。もう少し時間をかけて生地を作って洋服を作ることが正しいとされてきている。いい傾向だと思います。ファストファッションがどんどん縮小しているっていうのはまさにそういうことです。


Tシャツの素材について

山崎:Tシャツの素材について、詳しくお聞きしたいと思います。「kijinokanosei」のSSコレクションとして出されたものですが、産地はウール中心のAWコレクションと比べて違うものですか?

田中:そうですね。AW素材だと、尾州が多いです。SS素材の麻は遠州と呼ばれている浜松とか掛川になったり、薄手の細番だと桐生とか石川のほうになったりします。このTシャツに関しては刺繍加工は石川県で、カットソーは和歌山のほうで作っています。エリアごとのお得意の分野を終結させたTシャツという感じで。

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田中:ハイマイクロコットン(カットソー生地)は東京の柴又で染色しているんですよ。創業100年以上の老舗工場で丁寧に染めていただいています。その後の縫製は山梨でやっていただいています。

山崎:各地を回って…本当に贅沢なTシャツです。白も染めてるということですか?

田中:そうですね、白もより白度を出すために蛍光晒という染めをして爽やかな白にしています。大人のTシャツにぴったりの素材で、透けすぎない、丁度いい24番手です。

山崎:ほんとに丁度いい感じですよね、柔らかいですし。

田中:この柔らかさっていうのも、綿のわたをクオリティのいいものにしているからなんです。本来であればもっと細い糸を作ることができる、繊維長の長い原料がいいもので太い糸を紡績し、Tシャツの生地にしています。普通のものよりも光沢感とか、落ち感とか、カジュアル過ぎない綺麗めな感じが表現できている素材です。洗ってもヘタレないですしね。

吉川:天竺は輪で上がったものにハサミを入れて平たくしたものを染めるのが一般的ですが、それをしないで丸胴のまま染めることで、天竺の良さを殺さない染め方をしているのがこの素材の一番の特徴です。丸のまま染めるのは工程として手間がかかりますが、綿の良い風合いが出るんです。

山崎:ヘタレにくいというのも、やはり丸のまま染めているからなんでしょうか?

田中:そうですね。目が詰まった状態で上がってくるので、洗濯であまり縮まないようなクオリティになってます。山梨の工場に入ってから裁断前にスポンジングという機械でもう一回蒸気を当てて、よりそこで縮ませてから裁断するので、洗った後も差がなかったりします。

山崎:確かに、サンプルを洗ってみましたが全然縮まなかったです。

吉川:スタンプアンドダイアリーでも、これが今カットソーの主力になっていて、すごくリピーターさんが多いです。


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ハイマイクロコットンについて詳しくは上記画像をクリック(外部サイトにリンクします)


田中:表面の刺繍生地に関しては、全面に刺繍をしていて、ちょっとおもしろい織物風を表現しています。「Ami(編み)」という名前の生地です。刺繍は逆に洗うとこの面が縮むんですよね。洗ってない表情も素敵なんですけど、洗うと凹凸感が出て、より立体的に、より織られてる風に見える感じがまた面白い表情になっていると思います。

山崎:そういうものは生地を作られる時にこういう感じになるだろうなと、予想して作られているのですか?

田中:そうですね、刺繍の綿糸って絶対縮むっていうのと、刺繍の工程ってかなりベースを引っ張って針をドスドスドスと刺すんですよ。全然生地がリラックスしてない状態で仕上がるので、水を通すと縮んでポコポコとなっていくのはいいところだなと。

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山崎:スタッフがこのサンプルをみてとても驚いていました。これが刺繍なんですか?と。刺繍って模様を縫っていくイメージだから、こんな刺繍ができるんですね、と。

田中:全部穴を開けながら刺繍するんです。

山崎:穴を先に全部開けてから刺繍するのでしょうか?

田中:刺しながら開けるという感じです。刺しながらステッチの中に入れ込むようなつもりで。切りながら巻き込んでいきます。

山崎:切った生地はこの刺繍の中に巻き込まれているということなんですね!

田中:そうなんです、なので少し硬くなっていると思います。

山崎:ほんとにどうやってるんだろう?と不思議でしょうがなかったんです。徐々にやっていくんですね。どの位時間がかかるものなのでしょうか?

田中:この刺繍は27.4m作るのに8時間半かかると言われています。刺繍の機械ってアナログで古いものを必死で回してくださっているんですが、このアミ刺繡はなかなか簡単にいくような刺繍じゃないってことがだんだんわかってきて、苦労を重ねているような素材です。

山崎:生地を作られる時に、先ず生地を作ろうという考えなのか、その先の商品を想像して生地を作るのと、どちらなのでしょうか?

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田中:基本的には生地を作るのが最初です。いろいろ可能性が見えてきた時に、これだったらパンツがいいんじゃないかとか、ブラウスにしようかとか。何も考えずに生地だけ自由に作ったら、今度はそれを椅子張りにしたいってなった時に、後付けで樹脂をつけてみたりとか、本当にその時々のアイデアで動いています。

山崎:やりながらという感じなのですね。

吉川:けっこう偶然性が良かったこともありましたね。織ってみたら生地の裏側のほうが良かったり。先々を考えすぎちゃうと偶然の賜物って生まれなかったりします。最初のコレクションはとても純粋なんです。それをきちんとアーカイブ化していきたいっていうのはすごくあります。

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※裏側も人気がある生地、Hisui


今後の「kijinokanosei」

吉川:今後は家具の張地をやっていきたいです。ただマーチンデールは今のところ20,000台くらいです。

山崎:ホームユースであれば問題なさそうですね。イマさんの手がけたホテルのお部屋に入ってた天童木工さんの家具にもkijinokanoseiの生地が張られてましたね。すごくかっこよかったです。

吉川:6月に開催されるインテリアライフスタイル展では、家具の張地を初めてお披露目したいと思っています。

山崎:今後の展開を楽しみにしています!今回は色々なお話を伺うことができて、ますますファブリックについての興味が湧きました。ありがとうございました。

吉川・田中:ありがとうございました。


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2022年よりスタートしたkijinokanoseiは、新しい生地を作る過程での可能性、そこから広がるものづくりの可能性を追求していくファブリックブランド。生地にまつわる長年の仕事を通じて培った知識と経験、新しいものへ挑戦する熱意と冒険心は表と裏とで全く異なる表情を持つ、個性豊かな生地を生み出します。
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