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第39回 時に追われる現代人へ、ヤコブセンからの贈り物。


アルネ ヤコブセン テーブルクロック

スマホのおかげで時計をあまり使わなくなくなった。どこへでも持ち歩け常に正確な時刻を表示してくれるスマホは、本当に便利だ。おまけにアラームも付いているし、タイマーにもストップウォッチにもなる。しかし、それでも掛け時計だけは別だったりする。掛け時計の最大の利点は、その部屋のどこにいても一瞬で時間がわかるというところ。家の中ではスマホは大抵置きっぱなしだし、また時間を知りたいだけなのにいちいち起動するのも面倒。なので我が家でも掛け時計だけは、リビングの壁にずっと掛かっている。だが、置き時計となると話は違ってくる。それこそスマホがあれば十分なので、いつの間にか家の中からも姿を消した。なのであえて置き時計を使う理由があるとするなら、それはインテリア性やデザイン性、デジタルにはないアナログな存在感が魅力だったりするのかもしれない。

今回とり上げるのはアルネ・ヤコブセンのテーブルクロック。ヤコブセンといえば言わずもがな、かのアントチェア、セブンチェアをデザインした巨匠。建築家であり、家具や食器など多くのインテリア製品を手がけ、その時代のモダンスタイルを確立したデザイナーだ。 下記の3タイプのうちSTATIONとLKは、1930~40年代にヤコブセンがデンマーク最大手の電気機器製造会社であるLauritz Knudsen(ラウリッツ・クヌーセン)のためにデザインしたもので、大戦の影響ですぐに販売中止となってしまった幻のテーブルクロックと呼ばれる製品。それがオリジナルにとても忠実に現代に甦ったなんて、相当ワクワクする。そんなヤコブセンのテーブルクロックを簡単にご紹介します。


●LK
Lauritz Knudsen社のクロックデザイナーとしてヤコブセンが最初に手がけたのが、このLKだ。1939年のデザインでそれまでは住宅設計を主に手がけていたヤコブセンの、初めてのプロダクトデザインだと言われている。スクリプト系の数字とアウトライン曲線の針が優しい趣で、ナチュラルやクラシックな空間でも似合いそうなデザインだ。


●STATION
1943年にデザインされたこの時計はその視認性の高いアラビア数字の文字盤が高く評価され、デンマーク国内の鉄道駅の時計にも採用されたためSTATIONの名がついた。モダンなデザインがかっこよくおしゃれで、ちょっと懐かしい印象。そういえば昔、学校の校舎に掛かっていた時計もこんな文字盤だったかも…としみじみ思い出してしまった。


●CITY HALL
第二次世界大戦後の1956年。スウェーデンに亡命していたヤコブセンがデンマークに帰国して最初に手がけた建築は、コペンハーゲン近郊のルードブレ市庁舎だった。そしてその建物と一緒に設計され壁面に設置されたウォールクロックを、テーブルクロックに置き換えたのがこのCITY HALLだ。シンプルでミニマル。60年以上も前のデザインとは思えないほど現代的で、どんな空間にもマッチしそうな美しさが魅力的だ。

こうしてこの3つを見比べてみると。脚もとは一緒なのに文字盤と針のデザインが変わるだけで、かなり印象が違って見える。そう考えると実は時計はグラフィックデザインの要素が強いものなのだと感じる。これらの時計は背面にアラームを止めるボタンが一つあるだけで、それ以外のスイッチは表面には出ていない。裏蓋を外すと乾電池を設置するところと針を回すツマミが2つ現れる。アラームを鳴らすとジリジリジリン…とアナログな、ちょっと懐かしい音。時計に耳を付けると、チッチッチ…とかすかな音が聞こえ、動作していることがわかる。よくアナログ時計は秒針の音がうるさくて眠れない、なんて方もいるが、この小ささならほとんど気になることはないだろう。また、頭部をそっと叩くと小さなLEDライトが点灯、5秒経つと自動で消灯するというのも気が利いてる。

現代人はとかく忙しくいつも時間に追われているような印象だが、そんな時にふとこの時計に目をやると秒針がないことに気づいた。そして、ああ、時間は追いかけられるものではなく、丁寧に使っていくものなのだなと思い返す。まあまあ焦らずに、とりあえずお茶の時間にでもしませんか?と、ヤコブセンに言われたような、そんな気がした。


 

>おわり

ご紹介アイテム


 

□ シティーホール
サンディーベージュ 43693

ナチュラルな雰囲気の、ベーシックなカラー。

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□ ステーション
ブラック 43672

ベーシックなデザインが魅力的。様々な空間に合います。

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□ LK
ホワイト 43670

柔らかな印象のLKを美しいホワイトで。

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□ ステーション
バーガンディ 43676

シックでどこかレトロな印象を抱きます。

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センプレ創立メンバーで、現在フリー・デザイナーの小林さん。そんな内からも外からもセンプレをよく知る方に、時には感性鋭いデザイナーの目で、 時には一家を支える主婦の目で、センプレの扱っている商品のことを定期的に書き下ろしていただきます。

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文と写真 小林千寿子 / フリーランス・デザイナー


神奈川県在住。 グラフィックデザイン会社、(株)ゼロファーストデザインを経て、1996年に(株)センプレデザインの立ち上げに参加。
センプレでは主にショップのカタログなど、グラフィック部門を担当。 1999年からフリーランスで、活動中。 大学生の娘と夫との3人暮らし。