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第17回 アウトドアだけじゃない、室内でも大活躍


ハンティングチェア

昔からキャンプが好きだった。
20代の頃は友人たちと掘建小屋のようなバンガローに泊まった。その頃のキャンプ場にはお風呂などなく、トイレも和式でボロボロ、隙間だらけで虫もたくさん入ってくる。昼間着ていた服のまま寝袋に滑り込んで眠り、キャンプというとそれが普通で当たり前の時代だった。天気に恵まれず土砂降りの寒い日もあった。それでも自然の中で火を起こしBBQ をし、温かいお酒を飲みながら過ごす時間は何ものにも代えがたかった。
結婚してからテントとタープを購入し、娘が小学校低学年ぐらいまでは、オートキャンプに時々行った。場内にはちゃんとお風呂場もあってトイレも洋式水洗。とはいえやはりキャンプ場なので普通の住宅よりは虫も多いし多少汚れてはいたが、それでも昔のキャンプに比べるとはるかに快適だった。
そして時はすぎ、最近はおしゃれキャンプなんていうものが流行っている。場内サイトは手入れの行き届いたきれいな芝生張り。テントやタープもパオ型などおしゃれなデザインのものがたくさんあって、ランタン、グリルなどのツールギア類も昔は無骨なものばかりだったのだけれど、最近のものは格好いい。可愛いデザインのチェアなどを持ち込み、フラッグを飾ったりなんかして、キャンプも変わったものだなあとつくづく思う。昔のキャンプを知っている人間からするとどうもピンとこないのだけれど、でもこのハンティングチェアを眺めていたら、そんなキャンプも楽しいかもと思えてきた。


ハンティングチェアとはその名の通り、狩猟に使うための椅子だ。その歴史は古く、200年ほど前には存在していたらしい。銃と一緒に肩に背負って歩き、ポイントを見つけて腰掛け、獲物を待つ(なのだと思う)。そのため軽量で丈夫で機能的。さすがに今のこの日本では、この椅子を持って狩猟に出かける人などほとんどいないとは思うが、そういった用途として作られているため当然アウトドアには最適だ。
キャンプやピクニック、釣りや野鳥観察などはもちろんだが、野外フェスや屋外スケッチなどいろんな用途で活躍してくれそうだ。1.1kg と軽量なため、女性でも楽に持ち歩ける。大概のアウトドア製品はパイプフレームに布張りでこれはこれでもちろん機能的だが、このハンティングチェアの木と革の質感には敵わない。

もちろん、アウトドアで使うだけではもったいない。家の中でも十分に発揮してくれる。例えばキッチンで煮物をコトコト煮ている間にちょっと腰掛けたり、楽器を弾く時の簡易椅子にしたり、お客様が大勢いらした時の補助椅子として用意しておくのもいい。何気に置いてあってもインテリアとして素敵だし、使わない時は折りたたんでフックに引っ掛けていても、絵になるおしゃれさだ。

このハンティングチェアは、デンマークのgreenholt社の製品。greenholt社はスカンジナビアと日本のデザイン哲学からインスピレーションを得て、時代を超越したデザインを生みだす会社です。
3本脚は平らなところで使用するとちょっと不安定に感じるが、これは凸凹な地面でもしっかり安定させるための設計。座面のレザーはかなりしっかりしていて、腰掛けると程よくお尻を包み込んでくれる。
上質な革とブナの白木は使い込めば使い込むほど、美しい光沢感と深く落ち着いた良い色合いに変化していくだろう。

なんだか、このハンティングチェアを眺めていたら、急にキャンプに行きたくなった。とはいえおしゃれキャンプはちょっと気恥ずかしかったりするのだけれど。でもこの椅子に座って自然を眺めながら飲む1杯のコーヒーは、きっと美味しいだろうな。

>おわり

ご紹介アイテム

□ ハンティングチェア

そのままの革の肌の色がワイルドなスツール

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センプレ創立メンバーで、現在フリー・デザイナーの小林さん。そんな内からも外からもセンプレをよく知る方に、時には感性鋭いデザイナーの目で、 時には一家を支える主婦の目で、センプレの扱っている商品のことを定期的に書き下ろしていただきます。

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文と写真 小林千寿子 / フリーランス・デザイナー


神奈川県在住。 グラフィックデザイン会社、(株)ゼロファーストデザインを経て、1996年に(株)センプレデザインの立ち上げに参加。
センプレでは主にショップのカタログなど、グラフィック部門を担当。 1999年からフリーランスで、活動中。 大学生の娘と夫との3人暮らし。