第28回 今年の夏は、シンプルで身体にもやさしい虫対策。
香遣 / 菊花線香
夏の風物詩といえば、朝顔に蝉の声、風鈴の音、打ち水、花火、そして蚊取り線香の香り…。
日本の夏は風情があり情緒豊かで良いなって思う。特に夏の風物詩の数は四季の中でも、群を抜いて多く感じる。そして自然や行事が目につく他の季節に比べて家の中や生活にまつわる事柄が多いのも、夏の特徴かもしれない。
そんな日本の夏を彩る風物詩の中から、今回は蚊遣器と蚊取り線香をご紹介します。
毎年6月も半ば過ぎた頃から、少しづつ家の中で蚊の姿を見かけるようになる。最初は数日に1匹現れるか現れないかくらいだが梅雨も終わる頃には数も増え、本格的に蚊との戦いの火蓋が切って落とされる。日中は見つけたら追いかけ退治もできるけれど、一番悩ましいのは夜の就寝時。うとうと…とし始めた途端にブ~ンと耳元で羽音。無視をしてまたうとうと…、するとまたブ~ン。3回くらい起こされると、もう眠れない。「ねぶたしと思ひて臥したるに、蚊の細声にわびしげに名のりて、顔のほどに飛びありく。羽風さへ、その身のほどにあるこそ、いとにくけれ。 」というのは枕草子の一文だが、いにしえの時代、清少納言も現代の私たちと同じような思いをしていたと考えると、ちょっとクスッとしてしまう。しかし、そんな微笑ましいものではなく、とにかく蚊との格闘の日々を少しでも楽にしようと、いろいろなグッズを試してみる。置くだけマット、網戸に吊るすやつ、ラケット型の電撃殺虫ハエ叩きなど、世の中にはいろいろなものが販売されているけれど。でもできれば身体にやさしく安心して使えるものが良いなと思うし、インテリアにもマッチする機能的でおしゃれなデザインのものが欲しいと思う。
蚊取り線香は明治時代に発明されたものらしい。最初は長い棒状のものだったがそれだと40分くらいしか持たないため、渦巻状に改良された。そしてその蚊取り線香を焚く蚊遣器。蚊遣器というと蚊遣豚を思い描く方も多いかもしれない。懐かしく郷愁を誘うものではあるけれど、しかしそれはなかなかの存在感。もっとシンプルでデザイン性の高いものが欲しい…。そんな思いでできたのが、それがこの香遣(かやり)だ。アルミ製で軽量。持ち手がついているので簡単に運べて陶器のように割れることもなく、蓋付きなので灰も飛び散らない。デザインは小泉誠さんで、「蚊遣」ではなく「香遣」とネーミングしたのも小泉さんだそうだ。夏だけでなく一年を通じ、お香やアロマなども楽しんでほしいという意味から命名されたらしい。持ち手の部分には籐が巻いてあって手にやさしく馴染む。籐は貴重な天然素材で、製品にするためには結構な手間と時間がかかるらしい。しかし湿気に強く、使っているうちにアメ色の美しい風合いに変わっていく。持ち手の端は鉤型になっていて、上から吊るすこともできる。小さなお子さんやペットのいる家庭では、火のついたものを低い位置に置いておくのは心配。でも手の届かない場所に吊り下げることで安心感も高まると思う。この持ち手は折りたためるので、しまうときにも便利な仕様だ。
そしてこの香遣とともに使いたいのが、りんねしゃの菊花線香。天然成分のみで作られている。一般の蚊取り線香は殺虫剤や農薬成分、着色料など化学成分が含まれているものが多い。人体に影響はないといわれているが、虫を殺す成分なのだから、毒は毒。そういう意味では少量でも体に入ってくるのは少し心配。しかし、この菊花線香は除虫菊や除虫草、ハッカなどの天然成分だけで作られていて、ケミカルな物質を一切含まない。ではどうやって殺虫するの?と思うのだが、蚊を殺すのではなく蚊の嫌いな成分を出して寄せ付けないという考え方なのだ。実際使用してみると結構煙は出るのだけれど、刺激が少ない。喉が弱く煙ですぐ喉痛になってしまう私でも、これは大丈夫だった。サイズは普通サイズとミニサイズがあって、普通サイズは1度火を点けるとだいたい6時間程度の燃焼時間。そしてミニサイズは3時間くらい。6時間もいらないよ、という方にはミニサイズがオススメ。
先ほどの香遣は通常、中に敷いてある不燃マットの上に蚊取り線香を置いて使用するのだが、お香などの場合は蓋の上に置いて使うこともできる。アルミ素材はアルマイトの加工保護がされているため、腐食しにくく傷も付きにくい。
シンプルデザインの蚊遣り器と身体にやさしい蚊取り線香。夏の防虫対策に、ぜひ取り入れてみてください。
>おわり
ご紹介アイテム
センプレ創立メンバーで、現在フリー・デザイナーの小林さん。そんな内からも外からもセンプレをよく知る方に、時には感性鋭いデザイナーの目で、 時には一家を支える主婦の目で、センプレの扱っている商品のことを定期的に書き下ろしていただきます。
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文と写真 小林千寿子 / フリーランス・デザイナー
神奈川県在住。
グラフィックデザイン会社、(株)ゼロファーストデザインを経て、1996年に(株)センプレデザインの立ち上げに参加。
センプレでは主にショップのカタログなど、グラフィック部門を担当。
1999年からフリーランスで、活動中。
大学生の娘と夫との3人暮らし。