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第46回 「存在感が薄い」のが最大の魅力な、傘立て。


セクション

誤解を恐れずにあえて言うなら、この傘立ての一番の魅力は「存在感が薄い」ことだと思う。「存在感が薄い」という言葉は時として欠点と捉えがちだが、インテリアに関しては最高の褒め言葉になることがある。「存在感が薄い」ということは主張しすぎず、調和を乱さず、その場に馴染む、こと。特に、マンションなどのちょっと狭めな玄関では、とても大切な要素だったりする。


小さいけれども、安定の重量感
この傘立ての名前は「セクション」。直径15cm×高さ11cmとコンパクトで、使用していない時はその存在も忘れてしまいそうな大きさだ。もちろん傘を立てればそれなりの高さにはなるが、それでも玄関の隅っこにあればほとんど邪魔にはならない。バタバタと急ぎ出かけようとして、傘立てに服や荷物を引っ掛けて倒してしまった!なんてことにもなりにくいだろう。
こういったタイプの傘立ての場合、稀に軽すぎて安定が悪くすぐ倒れてしまうなんていう残念なものもあったりするが、この「セクション」の重量は1.3kgでずっしりと重い。刺さっている傘をちょっと手で押したくらいではまず倒れることはなく、主要な5つの穴に5本傘を収めても、問題なく安定していた。


鋳物の町で生まれた、質の高い製品
この「セクション」の素材は、アルミ製。アルミは錆びにくいうえ、陶器のように割れることもない。そのうえ底面はラバー製なため滑りにくく床を傷つけることも少ないし、傘の先端部への当たりもやさしいのが嬉しい。
製品は日本有数の金属産業の町、富山県高岡市で製作されている。高岡市は江戸時代から約400年も続く「鋳物の町」だ。初期の頃は鍋や農耕具といった日用品が作られていたが、次第に梵鐘や灯籠などの大きなものも手がけられ、江戸末期には仏具や花瓶など装飾性の高い製品も製作されるようになったという。その質の高さは国内はもとより海外でも賞賛され、現在では日本で作られる銅器の9割は高岡製らしい。それほどまでの一大銅器、銅合金の生産地の高岡だが、作られているのは銅器だけではない。この傘立てのように銅器産業で培われた鋳物鋳造技術は他の金属にも応用され、日用品でありながらもオブジェのように美しくスタイリッシュな製品へと生まれ変わった。


未使用時には、靴箱にだって収まります
コンパクトで邪魔にならないけれど、それでも玄関のたたきには何も出しておきたくない!という方は、ぜひシューズボックスへ。高さが11cmしかないため一般的な棚型のシューズボックスになら、大概収まってしまうだろう。
ここまでコンパクトが嬉しいということをメインに書いてきたが、もちろん魅力はサイズだけではない。ご覧の通り、とにかくシンプルでモダンなデザイン。製品の基本のカラーは白と黒なのだが、今回ご紹介しているシルバーはセンプレのオリジナルカラーで、アルミに錆や変色防止のためのクリア塗装をしただけだという。しかしアルミそのもの色であるちょっと濃いめのシルバーは、様々なインテリアに合いやすい。特に玄関のたたきは石タイルやモルタルなどグレー系の色調が多いため、シルバーは馴染みが良いと思うのだ。


ジメジメとちょっと憂鬱な季節。せめて玄関だけでもスッキリさせたい。好みの傘立てでマイナス気分が少しでも明るくなれば、なんて思うのでした。


>おわり

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□ セクション

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センプレ創立メンバーで、現在フリー・デザイナーの小林さん。そんな内からも外からもセンプレをよく知る方に、時には感性鋭いデザイナーの目で、 時には一家を支える主婦の目で、センプレの扱っている商品のことを定期的に書き下ろしていただきます。

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文と写真 小林千寿子 / フリーランス・デザイナー


神奈川県在住。 グラフィックデザイン会社、(株)ゼロファーストデザインを経て、1996年に(株)センプレデザインの立ち上げに参加。
センプレでは主にショップのカタログなど、グラフィック部門を担当。 1999年からフリーランスで、活動中。 大学生の娘と夫との3人暮らし。