トップ
閉じる閉じる

第10回 エコでやさしいメンテナンス


オーダーテーブル(ミズナラ天板)

ソープフィニッシュ メンテナンスキット

家具の仕上げの一つにソープフィニッシュというものがある。
文字通り木製の家具を石けん水で保護する塗装で、北欧などではよく使われる仕上げだ。石けん水を使って汚れを落とし、 石けんの塗膜で木を保護して汚れを付きにくくする。オイルと違って濡れ色にならないため、木地の地肌にとても近い風合いが残る。触り心地はさらっとしていて心地よく、使い込むうちに光沢が出てきてなんとも良い味になっていくのだ。

センプレオリジナルのミズナラのテーブル。家にやってきた時は無塗装のまま何も仕上げは施されていなかった。 そのまま使い続けて無塗装の経年変化を楽しむのも素敵なのだが、使っているうちになんだかシミだらけになってしまった。人の手の脂や汚れ、食べ物飲み物のシミ、ペンや鉛筆の跡、そして悲しいことに熱による輪ジミまでついてしまっている。もちろん熱々の鍋やお皿を直接置くなんてことはしていない。食事をする時は必ずクロスのマットを敷き、鍋を置く場合はかなりしっかりした鍋敷きを使用している。それでもいつの間にか布を通して天板に汚れや熱ジミができていたのだ。これはもう味というよりただ汚いだけ。あまりにも悲しすぎる。

ということで、このミズナラのテーブルに、ソープフィニッシュを施すことにした。
使うのはWENNEX(ヴェネックス)ソープフィニッシュメンテナンスキット。ソープフィニッシュはこういう専用の塗料を使わなくても市販の固形や粉の純石けんを使ってもできるのだが、石けん水を作るのがちょっと面倒な上なかなか乾かない。でもこのWENNEXのソープフィニッシュメンテナンスキットは揮発性が高いし、手間がかからないのだ。

まずは全体にサンドペーパーをかける。最初は荒く240番で。本来ならこの最初のサンドペーパーがけは必要ないのだが、熱による輪ジミはクリーナーでは落とせない。仕方がないので、表面全体を少し削ってしまうことにした。
次にWENNEX-C液(クリーナー)で、汚れを落としていく。このクリーナー、成分は純石けんとオレンジオイル、 炭酸塩、グリセリン(炭酸塩が強いアルカリなので肌をいたわるグリセリンが入っているのかも)、アルコール など。しっかり汚れは落とすけれど使う人のことも考えられていて、そして環境にも優しい。
C液を付けたスポンジで表面についた汚れを擦る。軽い汚れはこれで落ちるのだが、時間が経って染み込んだコーヒーのシミなどはなかなか手強い。そういった箇所にはC液をかけてしばらく放置。10分くらいしたら歯ブラシやメラミンスポンジでこすると、ほとんど綺麗になった。

汚れが落ちC液が乾いたらA液を塗っていく。この液の成分は、水に溶かした純石けんとエタノールだけ。オイルなどは自燃性があるため使用した布やスポンジの捨て方に悩むのだが、ソープフィニッシュにはその心配もない。
A液を塗布したスポンジで天板をこすると泡だらけになる。クリーナーで落とした後だけれど、この泡でまた綺麗になっていく気分。これで表面に石けんの塗膜を作っていくのだ。乾くと全体に少し白っぽくなる。マットホワイトな木目がとても美しくて、嬉しくなった。
そして仕上げにB液。これはミネラル成分の液体で、石けん水と混ざると化学反応で撥水性のある石けん膜を作ってくれる。
最後にかなり目の細かい600番のサンドペーパーで表面を滑らかにしたら終了だ。

まるで新品のように綺麗になったテーブル。なんだかそれだけで、気分がウキウキしてくる。

ソープフィニッシュは最初の半年くらいは大体1、2週間に1度程度手入れをしなくてはならない。塗膜がしっかりできてきたら1ヶ月に1度、その後数ヶ月に1度くらいのメンテナンスで良いらしいが、やはりかなり手間がかかる。しかしその分の愛着もひとしおだろう。

WENNEXを制作しているのはまるは油脂化学(株)という、80年ほど前から石けんを作り続けている日本のメーカーだ。自然素材にこだわり「人と自然にやさしいこと」をモットーに、昔ながらの製法で手間暇かけて石けんを作っている。そんなメーカーが作るWENNEXもやさしさに溢れていて、なんだかこちらの気持ちまで温かくなってくる気がするのだ。

ちゃんと考え丁寧に作られたもので手をかけながら、長く大切に使っていく。ちょっと手間はかかるけれど、やっぱりそんな暮らしが理想だなって最近とても思うのです。

>おわり

ご紹介アイテム

□ オーダーテーブル

天然木の天板で自分らしいテーブルを作る。

商品ページへ

□ メンテナンスキット

コラム内で使用したA・B・C剤セットになったキット。

商品ページへ

センプレ創立メンバーで、現在フリー・デザイナーの小林さん。そんな内からも外からもセンプレをよく知る方に、時には感性鋭いデザイナーの目で、 時には一家を支える主婦の目で、センプレの扱っている商品のことを定期的に書き下ろしていただきます。

コラム一覧はこちら>

文と写真 小林千寿子 / フリーランス・デザイナー


神奈川県在住。 グラフィックデザイン会社、(株)ゼロファーストデザインを経て、1996年に(株)センプレデザインの立ち上げに参加。
センプレでは主にショップのカタログなど、グラフィック部門を担当。 1999年からフリーランスで、活動中。 大学生の娘と夫との3人暮らし。